今後の研究開発の方向性
企業は、その時々の社内事情や社会情勢などに対して、柔軟に対応する必要があります。世界的な不況などで危機的な経済状況の中、「きのこ種菌業」は業界としての在り方や存続自体が問われようとしています。弊社は、世界初のシイタケ菌床栽培専用品種「北研600号」の開発から始まった「シイタケ菌床栽培技術の開発と普及」を大ヒットにつなげて事業拡大を図り、まさに節目の創業60周年を迎えようとしていますが、今後どのように事業を発展させていくのか、方向性が問われる非常に難しい局面にあります。
このような状況のなか、食用菌類研究所が行なうべき研究開発の方向性は、「現在」、「拡大」、「未来」の三つの視点からの、事業拡大の礎となる基盤整備であると考えています。
「現在」の視点では、これまで進めてきた事業継続のための下支えを確実に行なうことです。シイタケ菌床栽培システムは成熟していくつかの栽培方法に分化しており、目的に応じた品種開発はもとより、安定した品質と性能を発揮できる種菌提供などが求められます。
「拡大」の視点では、現在保有している弊社の強みを活かした事業展開です。例えば、シイタケ以外の新規のきのこや、一般に栽培されている食用きのこについて、これまでとは違った切り口から開発を行なうことで新たな需要を作り出します。さらに、それらを起点とした食用きのこの流通販売や六次化などへの展開が考えられます。弊社では、(公財)岩手生物工学研究センターとの共同研究によって、すでに「日持ち」に関わる遺伝子を特定し、そのマーカー化にも成功しています。また、近年、クローズアップされている機能性についても、いくつか有望な性質を特定できています。これらの資源を活かして食用きのこが持っている食品としての有用性を積極的にアピールしていきたいと考えています。
「未来」の視点では、国内のみならず海外を見据えたすべてのきのこ消費者への展開です。そのためには、さまざまな多様性に対応できる品種開発や技術開発が必要になります。
以上のように、これまで進めてきた方向に沿った改善や改良を行なうだけでなく、新たな事業開発に向けた枠組を創造することが、重要な使命であると考えています。