きのこ狩りのはなし
秋や春にきのこ狩りに行けば、色とりどりの様々な形のきのこ達が私たちを出迎えてくれます。野生のきのこを採取するということは、季節を感じるとともに、その土地の文化を知るということでもあります。今回は、これからきのこ狩りを始める方に向けてお話していきたいと思います。
きのこ狩りに行く前に
どの山でも、生えているきのこを自由に採集していいというわけではありません。例えば、採集をした場所が私有地であった場合は窃盗という行為に当たり刑事罰対象になりえます。国有地であっても、無許可で採集を行えば森林窃盗罪というものに該当することがあります。そのため、きのこ狩りを行う際は、土地の持ち主を確認し、持ち主の許可を得る必要があります。親戚や知り合いの山を紹介してもらう方法や、入山料を払うことできのこ狩りができるシステムの山もあります。
また、土地を荒らさないように心遣いが必要です。きのこたちは無限に発生してくるわけではありません。むやみに地面や木を荒らさず、必要以上の乱獲は慎むようにしてください。
事故・遭難に注意
一歩自然に足を踏み入れればそこは別世界です。事前にルートをしっかりと確認し、計画性のある行動を心がけましょう。山中では天気や体調の急変、滑落など怪我の恐れもあります。毎年、何件か遭難事故が報告されています。夢中になりすぎて気が付いたら日没時間になっていたなんてことのないよう常に冷静な行動を心がけましょう。
野生動物にも注意が必要です。山中ではクマ、イノシシ、ヘビ、ハチなどいろいろな生き物が暮らしています。近年、クマによる被害が目立ってきています。クマ鈴を装着するのはもちろんですが、ラジオで大人数がいるように見せかけるのが有効とも言われています。そして、極力単独行動は避けるようにしてください。クマの糞や爪痕などを見つけた場合はすぐに引き返し身の安全を確保するようにしましょう。山に入る前に地元の人からその地域で注意する動物などの情報を聞いておくといいでしょう。もしかすると、旬のきのこの情報も入るかもしれません。
クマやヘビ以外にも危険な動物はいます。それは人間です。ハンターによる誤射や罠などによる事故が後を絶ちません。目立つ服装をし、人間がいるというアピールをしっかりとしてください。クマ鈴やラジオはこういった面でも有効です。
きのこ狩りの
装備について
きのこ狩りをするには登山と同じような準備が必要です。まずは服装ですが、動きやすい格好をすることと、体を保護できるものを着ることがポイントです。そのため、長袖、長ズボンを基本とし、手は軍手などでガードしましょう。上着やズボンは厚手のものが体を守りやすいですが、ジーンズなど生地の硬い素材のものだと動きを妨げることがあるので注意してください。靴は登山靴や軽登山靴が望ましいですが、山の勾配によっては履きなれた運動靴の方が向いている場合もあります。表1に服装の目安と装備品として主なものを記しましたのでご参照ください。表に示したもの以外にも、きのこ図鑑、樹木図鑑などがあるときのこ狩りの楽しみが広がります。
毒きのこに用心
皆さんが最も気にされることは毒きのこを誤って食べてしまわないか、ということでしょう。毎年秋になると必ず食中毒事件のニュースを耳にします。野生きのこはとてもおいしいのですが、毒きのこを採ってしまうことは身の周りの人たちを危険にさらすことに繋がります。そのようなことにならないためにも確実に食べられるきのこを覚え、怪しいものは絶対に採らない・食べないことが重要です。その判断ができるようになるためにも、観察会や採集会で専門家の話を聞いて特徴を覚えることが大切です。
観察会・採集会の勧め
きのこ狩りはなんだか大変そうだな、と思う方が多いかもしれません。そんな方には手軽に楽しむ方法として観察会、採集会へ参加するという方法があります。学会主催のものは専門性が高い傾向がありますが、各種法人や森林公園などが主催しているものは自然やきのこに親しんでもらうコンセプトのものが多く老若男女が楽しめるものとなっていることが多いです。もちろん主催側が採取や入山などの許可も済ませているので安心です。ただ、基本的には大量に採ることを目的とはしていないので、あくまできのこの勉強をして触れ合っていただくための場になります。
観察会、採集会にはいくつかのスタイルがあります。①参加者全員でフィールドをガイドの解説を交えながら散策していくスタイル、②参加者が一定時間フィールドを散策し、各々が採集したきのこを持ち寄って鑑定、解説を行うスタイル、③それぞれが採集したきのこを持ち寄って、鑑定、解説だけを行うスタイル、などがあります。