しいたけのひみつ

シイタケの秘密

皆様は和食の基本「まごはやさしい」をご存知でしょうか? 和食に欠かせない食材として「し(=シイタケ)」は古来より、日本人の食卓に登場してきました。なぜそれほどまでに人々の生活に馴染み深いものとなったのでしょうか? シイタケを含むきのこ類は体の調子を整えるもとになる食材ですが、健康に関する効用を含めて、その秘密をご紹介します。

【芳醇な香り】

食べる前に「シイタケだ」と感じる香り、この香りの成分が「レンチオニン」です。
あまり聞きなれない言葉ですが、特に、乾シイタケにして、水戻しすることで強く現れます。(参考文献2)

レンチオニン

【料理を引き立てる味】

3大旨み成分が含まれる食品として、カツオ、コンブ、シイタケが挙げられています。シイタケの中には「グアニル酸」という旨み成分が多く含まれています。(参考文献3、4)

グアニル酸

【やさしい歯ごたえ】

シイタケには食物繊維が多く含まれていて、独特の食感があります。食物繊維は、消化がされにくいことから、便秘改善、生活習慣病予防、肥満予防、ガンの予防につながるとされています。(参考文献5)

【健康につながる成分1 ~カリウム~】

シイタケにはカリウムが含まれています。カリウムには、便秘改善、血圧降下、筋肉や心筋の活動を正常に保つ作用、肝臓における老廃物の排泄を促す働きが期待できます。(参考文献6)

【健康につながる成分2 ~エリタデニン~】

シイタケには、エリタデニンという、他のきのこ類にはない特有の成分が含まれています。コレステロール除去や血圧降下作用があるため、現代社会に多い、バランスの悪い食事をされている方や肥満の方にすぐれた食品です。最近では、病原菌の成長阻害などが報告されています。(参考文献7、8)

エリタデニン

【健康につながる成分3 ~ビタミン~】

シイタケには多くのビタミンが含まれていますが、その一つにビタミンDがあります。
ビタミンDは、腸からのカルシウム吸収や骨への吸着に大きな役割を果たします。ビタミンDとカルシウムを一緒に摂取すると大腸がん予防やアンチエイジング(抗加齢)効果があるとの情報もあります。また、ビタミンDの素となるエルゴステロールもシイタケには含まれています。(参考文献3、9、10、11)

ビタミンD2

エルゴステロール

【健康につながる成分4 ~抗酸化成分~】

シイタケにはビタミンCやエルゴチオネインなどの抗酸化成分が含まれています。細胞のDNAが酸化される(傷つけられる)ことで、ガンなどの病気が発生しやすくなると言われていますが、抗酸化成分はDNAなどが酸化されることを抑制する効果が期待されています。シイタケを食べることでDNAの酸化抑制につながる可能性があり、今後の研究成果に期待したいところです。

【健康につながる成分5 ~レンチナン~】

シイタケにはβ-グルカンの一種である「レンチナン」が含まれています。β-グルカンは体の免疫作用を高める効果があり、β-グルカンは免疫を担う白血球を活性化する作用があると言われています。(参考文献1~6)
1969年、シイタケから精製されたレンチナンには、ガン細胞の成長を強く抑制する効果があることが報告されました(参考文献7)。その後、レンチナンの抗がん作用について多くの研究がなされ、1985年には、ガンの治療薬として認可され、現在も医療現場で使われています。

参考文献

図1.「全国きのこ新聞」有限会社農業経済新聞社 2012年1月1日
図2.日本化学物質辞典 Webホームページ
https://jglobal.jst.go.jp/info/nikkaji
図3~5.「キノコの化学・生化学」(水野卓・川合正允)学会出版センター 1995年4月15日

1.「食と感性プロジェクト」(都甲潔)九州大学
2.「からだにおいしい野菜の便利帳」(板木利隆監修)高橋書店 2008年7月30日
3.「きのこ-健康とのかかわりを科学する-」日本特用林産ホームページ
https://nittokusin.jp/kinoko/
4.「日本うま味調味料協会」ホームページ
http://www.umamikyo.gr.jp/
5.「グリコ栄養成分百科」ホームページ
http://www.glico.co.jp/navi/dic/index.htm
6.「栄養の基本がわかる図解辞典」(中村丁次監修)成美堂出版 2005年1月
7.Sugiyama,K,.Akachi,T,.Yamakawa,A,.
The Hypocholesterolemic Action of Lentinus edodes Is Evoked through Alteration of Phospholipid Composition of Liver Microsomes in Rats,
Bioscience,Biotechnology and Biochemistry., Vol.57(11),1983-1985(1993)
8.Ctrnacta,V,.Fritzler,J.,Surinova,M,.Hrdy,I,.Zhu,G,.Stejskal,F,.
Efficacy of S-adenosylhomocysteine hydrolase inhibitors,D-eritadenine and (S)-DHPA,against the growth of Cryptosporidium parvum in vitro,
Experimental Parasitology., Vol.126(2).113-116(2010)
9.「腰痛・骨折予防にビタミンD」(吉川敏一)日本経済新聞 2009年11月6日
10.「骨の代謝促進・生活習慣病を予防」日本経済新聞NIKKEIプラスワン 2011年6月11日

参考文献

1.S.Haba et al., Int.J.Cancer,18,93(1976)
2.J.Hamuro et al., Cancer Res.,38(9),3080(1978)
3.M.Suzuki et al.,Cancer Immunol.Immunother.,38(1),1(1994)
4.J,Hamuro et al.,“Immunomodulation Agents and Their Mechanism”,p.409,R.L.Fenichel & M.A.Chirigos eds,Marcel Dekker,New York(1984)
5.G.Peter et al.,Immunopharmacol.Immunotoxicol.,10(2),157(1988)
6.M.Tani et al.,Eur.J.Clin.Pharmacol.,42(6),623(1992)
7.G.Chihara et al.,Nature,222,689(1969)

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